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2011年2月20日日曜日

「便」という字はあまりいい字ではないらしい

~犬猫論争のついでに~


 先日、犬派の私と猫派の連れ合いが、「犬と猫はどちらが可愛いか」という、たわいない論争をしていたのです。犬は飼い主に従順で、自分を頼りにしてくれているという実感があるため、お互い信頼関係で結ばれています。従って、たとえ家族に冷たくあしらわれたとしても、「お前だけは俺の味方だよな」といえば、尻尾を振りながら近寄ってくれるのですね。それに比べて猫は、自分勝手できまぐれで、こちらが可愛いといって近づいていっても知らん顔、挙句の果てに爪で引っ掻かれて逃げていってしまうのです。「猫」を含んだ言葉でも、「猫ばば」・「ドロボー猫」・「猫なで声」・「猫かぶり」などとろくな言葉がないではないかとたたみかけたのですが、先方も然る者、犬だって「犬死に」・「犬の遠吠え」・「幕府の犬」・「権力の犬」などというではないかと突っ込まれ、逆襲にあってしまいました。ボキャブラリーではとてもかなわないため、私は黙り込んでしまうのです。


 最近話題になっているのが「便」という字です。IFRSでも「経済的便益」という言葉が頻繁に出てきますし、昔は「会計便覧」という専門辞書があり、私もずいぶんお世話になりました。もちろん「便利」というありがたい言葉もあります。でも、最近話題になっている「便」「方便」という言葉のようです。ちなみに「新明解国語辞典」で調べてみると、「目的を果たすために仮に用いる便宜的な手段」のことをいい、例として「ウソも方便」とありました。


 もう少し「便」を調べてみると、「便宜…その時の都合で臨機の処置をする」・「便宜上…その時最上のものが得られないので、それに次ぐもので当座の用を間に合わせる」・「便宜的…理想的ではないが、他に上策もないので、仮にそれに従うようす」とあります。どうもあまりいい意味では使われていないようですね。我々市民が日常生活の上でやむにやまれず方便するのは、ある面やむを得ないケースもあるとは思いますが、企業の経営者や責任ある立場の方が方便されては困ります。「方便」する人を見かけたら、その心を見抜くだけの「眼力」を養わなければならないのですが、正直で素直な人にとってはなかなか難しいことだと思います。


 この際「経済的便益」も、「便」という字はやめにして、例えば「経済的価値」とか「経済的有用性」といったほうが、日本語的にも通りがいいような気がするのですがいかがでしょうか。