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2010年11月12日金曜日

人事は難しい

~「人事に弁明なし!たとえ間違っていても」というけれど・・・~


  7~8年くらい前になりますか、退職給付会計が導入された後、日本においても人事評価に関して成果主義が流行り始めました。某上場会社が真っ先に取り入れて、長年日本でなじんできた年功序列制度に一石を投じることになったのです。ちょうどその頃、私に講演依頼があり、会計の話(当時は会計ビッグバン)とそれ以外のテーマで、2日間にわたって話をしてほしいと頼まれてしまったのでした。頼まれたからには断ることのできない性格ですので、それでは人事・法務・労務の話をしましょうと見栄を張ってお答えし、それからは特に人事に関して私の猛勉強が始まったのです。

  講演は9月だったため、夏休み中は1日10時間くらい部屋に閉じこもり、人事関係の本を読みあさってはレジュメを作成するという毎日が続きました。その頃は人事関係の新聞記事が毎日のように登場していたため、得意のスクラップで情報を集め、自分なりにそれなりの人事評価体系をまとめることができたのです。

  人事で難しいのは、ほとんどの人が自分を過大評価する傾向があるということでしょうか、あるいは「所詮自分のことはわかってもらえない」という、あきらめがあることでしょうか、評価されるほうからするとなかなか納得感がないということだと思います。「あんたなんかに評価されたくない」と思っている人は多いことでしょう。評価するほうがいくら公平な人事評価を行っていると言ってみても、評価者のお気に入りで能力以上の評価をされた人以外の大部分の人は、自分の評価に対して不満を抱いているにちがいありません。

  そこで出てくるのが人事の格言、「人事に弁明なし!」です。そしてこの後に続く言葉がまだあります。「たとえ間違っていても」とくるわけですね。たとえ弁明したとしても誰をも納得させる人事などあり得ないわけで、その人たちの不満や「なぜだ!」に応えていてはきりがないし、感情のある人間のやることだから、完全な人事考課など無理ですよということから、この鉄則が人事担当者の間で成り立っていたのだろうと思います。人事考課に対する不満を聞いてあげて、それで評価をころころ変えていては、人事制度そのものが崩壊してしまうということになりかねないですからね。


  しかしである。弁明とはいかないまでも、なぜこの評価なのかという説明を、ある程度ご本人に対してしてあげるべきではないでしょうか。納得感のない人事考課が組織の活性化を蝕んでしまうのは、過去の事例が証明していますし、いくら頑張っても評価されず、年功が優先される組織であれば、「やったもの負け」問題がはびこってしまいます。あなたの隣にも、仕事をしているふりをしながら、実はインターネットで遊んでいるという人はいませんか。難しい仕事を頼まれると、今の仕事が忙しいからと言い訳して逃げている人はいませんか。低いハードルを設定して、それをクリアして喜んでいる人はいませんか。高いハードルを設定して、失敗しそうでもそれをクリアしようとトライする人を、私は応援したいと思います。