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2009年7月29日水曜日

解散に辞任に解任に更迭

~人事はいろいろ大変なのだ~


政治の世界でもスポーツの世界でも、人事を巡っていろいろ世間を騒がせているようです。麻生首相の立場も都議選以降、なにやら危うい雰囲気になっていましたが、とうとう衆議院の解散に打って出る事になりました。麻生首相では選挙は戦えないということで、首相の辞任を求める声もかなり大きかったのですが、何とかしのいで選挙に賭けるようです。それにしても、あの「高齢者発言」はいけませんね。総理としての人格を問う以前に人間性を疑ってしまいます。
少し前の話になりますが、日本郵政の社長人事をめぐる「鳩の乱」もなかなか大変でしたね。私が西川さんだったらとっくに辞任しているでしょう。あの粘り強さはすごいと思います。鳩山さんも、解任されても自分の意思を押し通すというのは、それはそれでなかなか見事な態度だと思います。


そういえば、ロッテのバレンタイン監督は戦いが始まる前に今年度での解任を言い渡されていたようで、ひどい話です。ご本人はどんな気持ちで監督として指揮を執っているのでしょうか。監督も選手もモチベーションが下がってしまいますね。また、横浜ベイスターズの大矢監督も、3ヶ月ほど前に成績不振の責任を取って解任されました。辞任も考えていたかもしれませんが、気持ちを切り替えこれから立て直してがんばろうという矢先だったとしたら、さぞかし無念だったと思います。本当は球団も気を使って、解任というより辞任扱いにしてあげればよかったのにと思ってしまいます。


解任で思い出すのは、ジャイアンツの監督をしていたときの長嶋さんです。ミスタープロ野球といわれ、プロ野球の繁栄に多大の貢献をしましたが、監督としての1年目は戦力に恵まれず、最下位に終わりました。それでも2年目には優勝し、しばらくはいい成績を残していたのですが、ある日突然読売に解任されたのです。巨人にあれだけ貢献し、さらに若手が成長してさあこれからというときの突然の解任劇だっただけに、本人としては前を向いて一生懸命走っているときに、突然後ろから刀で切りつけられたような気持ちだったに違いありません。それでも「男のけじめ」という名言を残して巨人を去ったわけですが、その後もずっと再び巨人の監督のチャンスが来るまで待っていたというのは、なかなかまねのできないことです。


私には、どうしてもしがみついていたいものは何もないし、仮に地位とか肩書きとかいただいたとしても何もこだわりはないので、気が楽です。しがみつくということは、そもそも私の「男の美学」に反します。プライドとか誇りだけは失いたくありませんが。


いったん手に入れたらなかなかその地位を手放したがらない人は、よほどその地位にいいことがあるのでしょうが、早く成仏したほうが健康にいいですよ。

2009年7月22日水曜日

日本語は難しい

~専門用語とはいうものの・・・~


  一般企業の総会も終了し、会計士協会の総会も無事終了しましたが、一息つく間もなく四半期決算の監査に突入してしまいます。早い会社ではすでに現場でのレビュー実務は一段落し、「独立監査人の四半期レビュー報告書」のドラフトが回ってくるため、文章を読んで内容のチェックを行うことになります。ここでいつものことですが、出くわすのですね、この文言に。


「・・・適正に表示していないと信じさせる事項がすべての重要な点において認められなかった。


 最初に読んだ時は何を言っているのかよくわからなかったのですが、いわゆる消極的意見表明ということで、二重否定の文言になっています。期末の財務諸表監査では、「・・・適正であると認める。」と、積極的に意見表明を行っているのですが、四半期はレビュー手続きが中心に行われているので保証のレベルが期末監査よりも低いため、このような意見になっているのです。でも一般の人が初めてこの文章に出くわすと面食らってしまうかもしれません。例えばNHKドラマ「監査法人」で、健司が「承認できないと信じさせる事項は認められませんでした」という台詞で小野寺に報告したとしたら、視聴者は「???」状態となってしまうでしょうね。国語的には正しいのかもしれませんが、何回読んでもなじめない言葉の一つです。


 最近IFRS(いわゆる国際会計基準)の導入が、会計士業界をはじめ上場企業の間でも大きな話題となっています。私も一足先に知識を身につけようと、本を買い込んだり雑誌の特集記事を入手して休日に読み込んでいるのですが、これがまたなかなか読みこなすのが大変なのです。IFRSといっても、会計的には特別難しいことをいっているわけではないと思うし、日本の会計基準自体もここ10年間でだいぶ進化してきており、しかも日本基準とIFRSとのコンバージェンスが進んできているため、読めばわかると気楽に思っていたのが甘かったのです。


 私も会計の専門家であり、IFRS特集を読んでみると、そこに書かれているのは間違いなく日本語なのですが、何しろ読んでもすっきり頭の中に入ってこないのですね。当初は私の過労と加齢による脳細胞の老化が原因かなと思っていたのですが、文章そのものが分かりにくいし、普段使わないような日本語がこれでもかとばかりにガシガシ登場してくるので、活字だけが素通りしていってしまい、頭の中にはなにも残らない状況なのです。IFESは日本語の解釈能力がないとなかなか手ごわい相手なのだ。


 同じようなケースはほかにもいろいろあります。たとえば内部統制における「重要な欠陥」というやつです。欠陥というと欠陥商品というイメージが先行してしまうので、大変重い言葉です。事業会社にとっては欠陥商品を発売した段階で命取りになりかねないので、非常に神経を使っているはずです。ですから「わが社の内部統制には重要な欠陥がありました」とはなかなか書きにくいと思います。「重要な欠陥」といっても、本当はそれほど深刻に考える必要はなく、内容的には「改善すべき事項」くらいに考えていただけたらいいのでしょうが、言葉の及ぼす影響と受け止める側の印象もありますので、なかなか難しいところがあります。


 「虚偽」という言葉も一般的にはほとんど使わない言葉ですが、監査業界ではよく使われる言葉です(積極的に口に出しては言いませんが)。クライアントさんに対して監査計画や監査結果を説明する際によく出てくる言葉なのですが、ある著名な社外監査役さんがこの言葉を目にして「会計士業界では虚偽などという言葉を使うのですか」と驚いていたのを思い出します。私も会計士業界の一員ですが、この言葉もどうしても馴染めないですね。


 ということで、すっきりしない日本語が多く登場するようになったのは、やはり翻訳の難しさがあるからでしょうか。それとも私自身が、監査業界ではもう骨董化しているからなのでしょうか。

2009年7月13日月曜日

NHKドラマ「監査法人」製作スタッフが「公認会計士の日」大賞特別賞を受賞した

~私も製作スタッフの一人に入れていただけるのだろうか~


7月6日が「公認会計士の日」であることは、公認会計士以外の方はほとんどご存じないかもしれませんので、このHPでささやかながらPRさせていただくのです。公認会計士法が制定された日にちなんでこの日が定められたわけですが、日経新聞にも全面広告が出ていました。キャッチコピーが「この経済社会は、愛を求めているんだと思う。」というもので、個人的にはちょっと気恥ずかしい言葉でしたね。公認会計士の方や世間の皆さんがこれを読んでどう感じられたのか、ちょっと気になるところではあります。


2日後の7月8日に、日本公認会計士協会の総会が開催されたのですが、13時から17時過ぎまで行われ、いつもながらの長丁場でした。総会終了後、「会員の声」の時間が設けられていたのですが時間がなく、せっかくの企画なのに二人しか質問できない状況で残念です。ここでも、今現在の会計士協会の標語である「会計・監査を日本経済のチカラに」について、質問が出ました。キャッチフレーズはイメージなので、あまりじっくり考えてもいろんな考え方や感じ方があり、人それぞれだと思います。よくよく考えてみると、内部統制の監査が始まって上場会社が対応に追われて疲弊しているという状況もあるでしょうし、多額のコスト負担に困っている会社もあるかもしれません。またそのため、新規上場が減る要因にもなっている可能性もあるため、本当に日本経済の力になっているのかという考え方もあるかもしれません。しかし一方では、正しい会計処理が行われ、監査が有効に機能すれば資本市場の透明性が向上し、ひいては日本経済の力になるとも考えられるわけです。いろいろ解釈できるので、後は感性の問題ですね。私はこの標語は気に入っています。


「会員の声」の後、懇親パーティが行われたのですが、増田会長のご挨拶の後、「公認会計士の日」大賞の発表が行われました。大賞は国際会計基準審議会理事の山田辰己氏が選ばれたのですが、大賞特別賞にNHKドラマ「監査法人」の制作スタッフが選ばれました。この番組が放映されたのが、昨年の6月~7月だったので、♪もう一年たったのですね♪(の「あの唄はもう唄わないのですか」より)。プロデューサーの磯さんや渡辺さん達が授賞式にお見えになっていたので、ドラマ放映後に打ち上げをやって以来、久しぶりにお会いすることができ、いろいろお話ができました。
授賞式の冒頭で、大きなスクリーンにドラマのワンシーンが映し出されたのですが、自分がかかわった番組でしたので、どきどきするやらはずかしいやら懐かしいやらで、不思議な思いがよぎりました。
渡辺さんは7月の異動で東京に戻り、「龍馬伝」を担当されるようです。また、「監査法人」で女性会計士の山中茜役を演じられた松下奈緒さんも、朝の連続テレビドラマ小説で主人公役を担当されるそうですね。当時のメンバーが、いろいろご活躍されるのは、私にとっても大変うれしいことで、自分の励みになります。いろいろ話しているうちに、切符を取っていた新幹線の時間に間に合わなくなってしまったのですが、そんなことはどうでもいいのだ。


総会にはたくさんの会計士が参加されたので、久しぶりにお会いできた方もいて、楽しい時間を過ごすことができました。無事終了して、何よりです。


2009年7月3日金曜日

監査法人を去る人たち

~定年退職に独立に転職~


 6月30日は、監査法人にとって一つの区切りの日となります。3月決算の監査対象企業の総会が無事終了し、有価証券報告書を提出した段階で、監査的にはやっと一年が終わったなとほっと一息つくことができるのですね。そしてこの日をもって、人生に一つの区切りをつける人もたくさん出てきます。この日だけで私のメールの受信ボックスには20通ほどの「退職のご挨拶」が名古屋をはじめ全国から届きました。定年退職される方、独立される方等さまざまです。


 独立される方々は「おーし!やってやろうじゃないの」と意気込みを新たにして、期待と不安と開放感に満ち溢れていることでしょう。また、定年退職される方々は、やることはやった。「わが会計士人生一遍の悔いなし」といって、北斗の拳ラオウのように燃え尽きた人もいるでしょうし、もっと事務所に残っていたいという名残惜しい気持ちの人もいると思います。


 私の場合、東京事務所を事情があって去る時には、その法人の名古屋事務所がなかったため、やむを得ず退職せざるをえませんでした。今であれば、法人内の移動ということになるのですが、昔は監査法人も全国展開していなかったのですね。まだ若かったし、仲のいい同僚やいい後輩・先輩に恵まれて大変楽しい時代を過ごしていたし、東京という都会も気に入っていたので、辞める時はさすがに悩みました。それにしても定年退職で事務所を去る時の気持というのはどのようなものなのでしょうか。私の場合は定年まで勤めることはあり得ないので、想像もつきませんけど。


 監査法人を定年退職した場合の就職制限には結構厳しいものがあります。これでは職業選択の自由がないではないか、憲法違反ではないかと思うこともありますが、競業の問題もあるしクライアントへの天下りと思われることもあるので、辞めた後はおとなしくしていなさいねということなのでしょうね。


 定年以外で辞める場合で、しかも時間がたっぷりある人にとっては、まだまだいろんな可能性が残っています。税務で独立することもできるし、友人と新しく監査法人を立ち上げることも可能でしょう。京都監査法人大阪監査法人があるのなら、「名古屋監査法人」があってもいいではないかと考える人が出てきてもおかしくはないでしょう。


 あるいは一般企業に勤める会計士が増えてきてもいいのではないでしょうか。今後IFRSが導入されることになってくると、どうしても会計の専門家が必要になってきますので、ある程度経験を積んだ公認会計士こそふさわしいと思います。


 それとも退職したらまったく新しい職業についてみるのも面白いかもしれません。たとえば農業などいかがでしょうか。昼は農業、夜は税務でいわゆる「兼業農家」というやつです。おもしろそうでしょう。あるいはいっそのこと公認会計士を廃業して、趣味三昧もいいですね。旅行に温泉に音楽に映画、それにゴルフにバンド活動、骨董収集・・・等々。


 などと思っていられるのも、実際今厳しい仕事をして疲れているためいろいろ想像を膨らませているだけであって、いざ退職となったら酒びたりとなり、実は家でボォ~としているだけかもしれませんが。


2009年7月1日水曜日

ああ!悲しき公認会計士よ

~公認会計士にもっと理解を!~


 協会本部による広報戦略がスタートしました。プロジェクトの目的は


■公認会計士の社会的役割の理解浸透
■公認会計士個人の幸福の実現
■優秀な人材の継続的確保


という事だそうです。


 広報の専門家が公認会計士に対するイメージについて意識調査を行った結果、クライアント等の外部の人たちは、公認会計士に対して比較的ポジティブなイメージをもっており、会計・監査の専門家で、信頼できる職業であるという認識を持っていただいているのですが、逆に公認会計士自身が自分たちに対してマイナーなイメージを持っているというか、自信喪失状態なのですね。これにはいろいろ原因があると思いますが、ここ数年の新聞の論調を考えると、わかるような気がします。


 公認会計士が世間で注目され始めたのは、ちょうど「りそな問題」が起こった頃でしょうか。「監査法人」のことがニュースステーション等テレビでも取り上げられるようになり、ヴェールに包まれていた世界が表に出てくるようになりました。そのときの私のカミサンの反応は「そういえばあんたも確か監査法人というところに勤めているんじゃない?」といったものでした。そのとき私は、この人は私がいったい何を生業として給料をいただいているのか全く興味がないのだなぁと、つくづく思いましたね。それほどこの世界のことは世間では知られていなかったのです。
 ましてや、私が公認会計士試験に合格し、この業界に足を踏み入れるようになった頃はなおさらです。
 

 東京にある監査法人に勤めていた私は、棚卸しの立会いで大垣にある工場に来ていたのですが、そこで当時の公認会計士試験第3次試験合格の知らせを聞きました。晴れて「補」の字がとれ、正真正銘1人前の公認会計士になることが決まった瞬間でした。前日からの約束で、私は当時の婚約者であった今のカミサンと名古屋で会うことにしていたのですが、とにかく一刻も早く合格の知らせを伝えたいと思い、名古屋駅で新幹線から飛ぶように降りると、その勢いで階段を駆け下り、ターミナルホテルのロビーまで転がるように走っていったのでした。

 そして、彼女を見つけるなり、私は晴れがましい表情で自信に満ちた口調で告げたのです。

   「3次試験に合格したよ。やったぜ、イェイ!」

 それに対して彼女はさぞかし喜んでくれると思いきや、きょとんとした表情で

   「???・・・」

 と語っていたのです。私はもう一度、

   「だから、公認会計士の3次試験に合格したんですけど・・・」

 と繰り返し言ったのですが、返ってきた言葉は

   「あっそう」

 と、つれないものでした。公認会計士に対する世間の知名度とはこの程度のものだったのかと、その時私は気がついたのです。


 公認会計士に対する認識というと、難しい試験に通った人というイメージはあるかもしれませんが、税理士や弁護士なら知っているけれど、公認会計士といっても、名前を知っているだけで、実際どんな仕事をしているのかわからないというのが大部分ではなかったかと思います。


 ここ数年は、いろいろ会社の不正会計が相次ぎ、公認会計士は一体何をしているのだというような記事が続いたため、あまりありがたくないイメージが先行してしまいましたが、公認会計士の仕事内容は、資本市場を支えると同時に、経済社会において重要な役割を果たしているのです。これからは、若くてバイタリティがあって志の高い優秀な会計士の卵がどんどんこの業界にはいってくることを期待したいものです。そして、「公認会計士試験に合格したよ」と言ったら、「え~!本当?すご~い!素敵!」と彼女に言われるくらい、広く世間にもっと我々の仕事の内容を知ってもらわなければならないし、またそのためにも日頃からもっとこの業界をPRしていかなければならないと考えているのです。