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2009年2月3日火曜日

朝青龍の派手なガッツポーズに思う

~日本の国技はもう終わってしまったのか~


 我々公認会計士は、監査でよく子会社や支店に往査するのですが、監査最終日には監査結果の講評会が行われ、各担当者は担当した科目について、どのような監査手続きを実施して、どのような会計処理上の問題点等があったのかを報告することになります。私がまだ若いころは、「何もありませんでした」と発表することは、無能な会計士とのレッテルを貼られてしまうことになるのではないかと思い、この講評会が結構プレッシャーになっていました。従って、監査の過程でどんな小さなことでも指摘事項を見つけたときはほっとしたものです。でも、指摘事項が仮に大きい問題だったからといって、「ウッシャ~!やったぁ!」とガッツポーズをとる事はありません。それどころか、むしろ指摘を受けることで担当者の立場が悪くなりはしないか、上司に怒られるのではないかと心配しなければならないこともあります。


 私は同じ秋田県出身という事もあって、中日の落合監督が好きで古くから応援しており、ロッテ時代から活躍していたのを当時の「プロ野球ニュース」で見ていました。セリーグに移ってからはテレビで応援していたのですが、私は落合選手がいくらサヨナラ打を放っても、ガッツポーズをしたのを見たことがありません。勝負はお互いプロの打者とピッチャーが死力を尽くして戦った結果であり、勝っても負けてもすがすがしい気分で戦っていたのだと思っています。ましてや、打ったからといってガッツポーズをするというのは、全力を尽くした相手に対して失礼だという思いがあったのだと思います。本当のプロは、ガッツポーズなどしないのだ。
落合選手は、デッドボールを受けても、よけられなかった自分が悪いとでもいうように、相手投手を睨み返すでもなく、何事もなかったかのごとく淡々と一塁ベースに向っていきました。逆にぶつけた投手は、戦闘開始とばかりにマウンドから降りてきても、落合選手の態度を見て「オレが悪かった」と帽子を取って謝ります。
 高校野球についても、私は夏の甲子園大会で三沢高校と松山商業が決勝戦で延長18回を0-0で引き分けた試合が行われた頃以前からのファンだったのですが、最近は全然興味がなくなってしまいました。それは、ヒットを打ったり殊勲打を打ったりすると、いつも塁上でガッツポーズをする選手を頻繁に目にするようになってからです。高校野球では「全力で戦った相手に対する思いやり」といったものを教えないのでしょうか。


 ゴルフはどうでしょう。ゴルフはある面自分との戦いです。優勝を左右する場面でロングパットが決まってバーディをとったりすると、おもわずガッツポーズが出るのもいいし、かっこいいなと思ったりします。でも、石川遼選手がプロ初優勝を決めたときは、おそらくタイガーウッズをまねて派手なガッツポーズをしたのでしょうが、あれはやはり周りの諸先輩方のことを考えると、あまり美しくはなかったですね。
そして大相撲の朝青龍です。ずいぶん派手にやってくれました。以前高見山が土俵上でやってひんしゅくをかった事がありましたが、「礼に始まって礼に終わる」という日本の国技にはふさわしくありませんでした。何しろ、大勢の観衆の前で一対一で勝負し、しかも全国の何千万人というテレビ桟敷の視聴者が、二人の全力勝負を見ているわけです。その前で負けた相手を前にして、ガッツポーズはないでしょう。
 今たまたま電車の中で「日経ビジネス人文庫」の「私の履歴書-最強の横綱」編を読んでいるのですが、大鵬など歴代の横綱(双羽黒を除き)はみんな品格がありましたよね。大相撲の歴史が何百年か千数百年かわかりませんが、歴史の重みが大きな音を立てて崩れてしまったような気分です。